平成13年度 研究の概要
1.主題
一人一人のよさを生かし,自ら学ぶ力を育てる学習を目指して
2.主題について
 21世紀初頭のわが国の小学校教育の指針となる新学習指導要領が告示され,昨年度より移行期間となった。その中では,従来にもまして各学校が教育課程の編成と実施に主体性を発揮して創意工夫を行い,子どものニーズを生かしながらその能力・態度等の陶冶・伸長を図り,生きる力を育成することが求められている。
 このような教育を実現するためには,自ら学び,自ら考える力を育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。
 本校では,「一人一人のよさ」とは,その子自身が持っていいる,可能性や独自性,創造性,関心など,また,努力を要すると思われる面も,視点を変え,「よい面」とし,子どもを多面的に見て,その子のよさととらえる。そして,その子なりのよさを,学習の中で生かしていくことを考えたい。また,「自ら学ぶ」とは,自分で問題や課題を見つけ,自分で考え,判断し解決していくなど,子ども自身が主体的に活動していくことと考える。
 そして,この「自ら学ぶ力」をそれまで身に付けた知識や技能などとともに各教科等の学習や生活において発揮し,統合していくことによって「生きる力」を育てていきたい

3.目標
 一人一人のよさを生かし,自ら学ぶ力を育てるための指導のあり方を明らかにする。
4.仮説
  理  科
(1)児童の興味・関心を高める事象提示の工夫をし,見通しをもった観察実験をすれば,自然を身近に感じ,
  学習に対する目的意識が高まるだろう。
(2)一人一人の考えを生かす学習形態や支援の工夫をすれば,児童は自ら考え事象の性質や規則性につい
  て実感することができるだろう。


  生活科
(1)児童の興味・関心が持続するような学習過程の工夫をすれば,主体的に活動していくだろう。
(2)児童の多様な学習を促すようなばの設定や学習形態や支援の工夫をすれば,新たな学びへと発展してい
  くだろう。


  総合的な学習の時間
(1)児童の興味・関心を高める事象提示やガイダンスの工夫をすれば,活動に意欲をもって取り組むことがで
  き,主体的に課題を見つけ解決していくことができるだろう。
(2)地域や学校の特色を生かした素材の開発をすれば,自分たちの生活を振り返ることができるだろう。

5.授業実践
  理  科
(1)4年C組「電池のはたらき」
(2)4年D組「ものの体積と温度」
(3)6年A組「電流のはたらき」


  生活科
(1)1年B組,2年D組「いきものランドをひらこう」
(2)2年D組,2年C組「みのりのあきをたのしもう」

 総合的な学習の時間
(1)3年C組「旭においでよ」
(2)5年A組「自分にできること〜ボランティア活動を考えよう〜」

6.成果
  理  科
(1)単元の導入時に単元に関連した,児童が興味を持ちそうな事象を提示し,児童自身の学習意欲を高めるこ
  とができた。4年生「電池のはたらき」では,児童に電池と豆電球を使った実験を自由に行わせることで学習
  意欲を高めることができた。4年生「ものの体積と温度」では,手に持った試験管を温めて一円玉を動かした。
  6年生「電流のはたらき」では,鉄釘にエナメル線を20回程度巻いて電磁石になることを演示した。自身の
  持っている知識を十分に生かし,実験計画を立てることができるように児童が計画を立てる時間を十分に確
  保した。そのため,児童の見通しを持って実験を行うことができた。
(2)児童が自分の考えで実験を進められるように,十分な数の実験材料を準備し,活動しやすい場の設定を行
  った。そのため一人一人が思い通りの実験を行い,自分の考えを確かめることができた。


  生活科
(1)身近な自然や生き物などで「遊びたい」「作りたい」という児童の思いや願いをもとに単元に入ることで,意欲
  や主体性を高めることができた。また,活動のめあてをはっきりと持たせていくことにより,興味・関心を持続
  させることができた。異年齢合同で単元計画により,「作り方を教えたい,見せたい」
といった児童の思いや
  願いを実現することができた。さらに,その活動の中でどうすれば楽しくなるか親しくなれるかなどの情緒的
  な関わり方を考えさせたり身に付けさせたりすることができた。学習内容や学習活動を他教科との合科的・
  関連的な指導の観点から見直し単元計画を立てていくことで,指導の効果を一層高めることができた。
(2)1・2年生合同による活動の場(生きものランド・あきらんど)を設定することにより,クイズ,ゲーム,紙芝居,
  体験コーナーなどの多様な活動が見られた。一人一人がそれぞれの役割をもっと活躍する場を設けたり1・
  2年合同で活動したりすることで,自分や友達,上級生や下級生のよさに気付き,交流を深めることができた。
  また,児童の興味や関心に基づいたグループ構成をしたので,最後まで協力して活動することができた。TT
  で授業に取り組んだので,児童一人一人への支援ができた。そのため児童は,自信を持って活動することが
  でき,喜びや充実感を味わうことができた。中庭や体育館,生活科ルームのスペースを生かしたことにより,
  主体的な活動の広がりや深まりを可能にすることができた。


  総合的な学習の時間
(1)単元の始めに地域への探検活動,車椅子の体験,地域のスーパーへの見学・調査など,様々な方法でオリ
  エンテーションを行ったことで,児童の学習に対する興味や関心が高まり,課題づくりに役だった。児童の興
  味・関心を生かして,調べたいテーマごとにグループを編成し,課題を調べた。さらに,課題解決を効果的に
  効果的に行なうために2Tや3Tで学習を行なう場面を数多く設定した。そのために,4人程度のグループを
  編成し,個に応じた学習ができた。
(2)学区が市の中心部にあることや福祉施設が多いという特色を生かし,地域の公共施設や福祉施設,商店街,
  田畑,川などの素材を教材開発し,児童の体験的に調査や見学をして調べるように単元を構成した。そのた
  め,児童の自ら学ぶ姿勢が向上した。児童は,問題解決へのさまざまな体験活動を通して,学んだ知識を自
  分とのつながっておいて,とらえることができた。

7.課題
  理  科
(1)単元の導入時や1単元時間の導入時に児童の意欲を高める事象提示を行うことにより,児童の学習意欲を
  高めることができた。高めた学習意欲のおかげで児童の学習は活発なものとなるが,学習の本質と離れた
  活動にさせないため,教師が児童の状態を確実に把握する手だてが必要となる。児童の考えが自由に学習
  させる部分と,明確な意図を持って教師が条件をある程度規制する部分をはっきりさせておかなくてはならな
  い。
(2)TTの指導形態は大変有効だが,それも十分な打ち合わせがあってこそのものである。教師の打ち合わせの
  ための時間は十分に確保しなければならない。児童の考えを深めるためには実験後の話し合いの時間を十
  分に確保する必要がある。さらに,発表の技能も高めておかなくてはならない。


  生活科
(1)異学年交流のよさは十分感じられ効果的であったが,事前の打ち合わせや準備に関わる時間の確保が難
  しい。それらを考慮した指導計画を作成することが大切である。
(2)目標にそった願いや思いの生かし方,それに伴う支援のあり方を更に工夫していきたい。今後も個々に応じ
  た適切な支援を行うためには,個々の児童理解に努めなければならない。特にTTでの指導ではきめ細かな
  支援が行えるように,担任より細かな指導を事前に把握しておく必要がある。生き物単元では,生き物とどの
  程度触れ合うか,見極めも教師の大事な支援の一つである。また,本などで調べるだけではなく,それと直接
  関わる活動の中で児童に気付かせていくことが大切である。


  総合的な学習の時間
(1)主体的に課題を見つけることができない児童がいる。これをどう支援して,課題づくりができるようにするか
  が重要である。それには,指導者がきめ細かく児童に寄り添って指導していく必要ががある。具体的にどこ
  まで支援していくのか,児童の実態の見取りと支援のあり方が課題である。
(2)児童が主体的に課題を問題解決するには,素材を学ぶ価値あるものに教材開発し,児童がやってみたい
  活動と絡めていく必要がある。児童の興味・関心を最大限尊重しつつ,自らのかかわりを通して体験的に
  とらえたのものの見方や考え方,生き方として何を目標にするか,設定する必要がある。